なぜ外国人留学生は就活で上手くいかないのかを考えてみました
先日、留学生採用について複数の企業様からお話を伺う機会がありました。そこで、ずーっと気になっていたことが、パッと閃きに変わった瞬間がありましたので、本日はその内容を書いてみたいと思います。後述いたしますが、まだまだ外国人留学生の日本での就職率は高くありません。
これには、採用する企業側の問題と、留学生側の問題の両方があると思っています。その原因が何か?ずーっと考えていたのですが、その答えが少し理解できたので、その内容をお伝えしたいと思います。
データから見る外国人留学生の就職状況
平成30年6月 文部科学省発表の外国人留学生の就職促進に関するレポートによりますと、平成28年度に日本国内の大学、大学院を卒業した留学生 23,946人のうち、国内に就職した留学生は 8,610人(約36%) となっています。
日本国内での就職を希望する外国人留学生は全体の64%にのぼり、結果からみると、2人に1人は就職できていない現状となっています。
一方、企業側からみると、マイナビ様の2019年の調査によると、企業の募集人数に対し、どれだけ内定者を確保できているかを示す採用充足率は前年比1.4ポイント増の84.4%で、この10年で最低だった2018年卒からほぼ横ばい。本年の2020年4月の採用活動でも依然、低迷している。つまり学生の売り手市場は続いています。特に地方の中小企業では、新卒採用は年々難しくなっていているとのお話も聞いています。
売り手市場なのに、留学生は2人1人しか就職できない??
人材と一口に言ってしまうと、それぞれの人の特性や、企業側が設定する採用基準もありますので、あまりに乱暴になってしまいますが、それでも、2人1人しか就職できないということは、なにか問題があるのかも?と長いこと思っていました。
ゆとり教育の影響か?働き方改革の影響か?
その原因が何か?と思っていたところ、ある企業様から、そもそも日本人学生と外国人留学生が会社に求めることが異なるので、それが面接の会話や態度にも現れてくるので、それが、結果としてマイナス評価にもなっているとのお話を聞きました。
日本人学生が新卒採用時に企業に求めることは、安定している会社かどうか?が1位になっています。自分がやりたいことができる会社という項目は、2位ではありますが、これが、2013年卒あたりから年々減少傾向にあります。
他方、外国人留学生をみますと、自分がやりたいことができる会社かどうかが、1位になっています。ここだけをみますと、安定志向の日本人と、チャレンジ志向の外国人留学生という構図が浮かびあがってきます。このことだけではなく、簡単に言ってしまえば、
- 日本人学生 = ライフ志向
- 外国人留学生 = キャリア志向
ということが言えると思います。外国人留学生は、自分の実力を高めることが第一で、会社の安定や、もっといえば、長く働くかどうかは、現時点ではわからないという、ある意味正直なスタンスを強く持っています。このようなキャリア志向だとどうなるか?と言いますと、採用面接での質問が、
・お給料いくらですか?
・こんなことを勉強してきたので、こんな仕事がしたいです
・留学生は活躍できますか?
みたいな質問を面接でしてしまいます。
私の個人的な見解ですが、新卒採用は、人材のポテンシャルを重視して採用する企業が多く、同時に、自社の文化、社風に共感しやすい性格の方を採用する傾向があるように思います。あくまでも個人の見解ですので、異論反論は多々あると思いますが、そこはご個人の意見として勘弁下さい。
つまり、新卒採用の面接では、共感性の高い人材が高い評価を受け、更に言えば、志向が近い人同士が、評価し、評価される環境においては、いきなり、お給料の質問からしてくる留学生には、驚かされてしまうのだと思います。
結果、会社選びは条件かよ? であったり、雑用多い職場内だと長く働くかわからないな・・・という評価をつけられてしまい、不合格になるケースが多いのだろうと思います。
でも考えてみれば、企業にとっても、キャリア志向は悪いことでもありません。やる気があるとも言えます。
しかし、その前提が伝わっていない中で、面接の場で主張の強い発言や質問をされると、日本企業は採用を躊躇してしまいます。つまり、企業側に留学生の志向性がしっかり伝わっていれば、日本人学生とは、異なる採用基準が用意できるのではないか?と思いました。
まとめ
地方の中小企業では、日本人学生の採用がなかなかできずに苦労していると聞いています。そこで、ぜひ、留学生の採用を検討してもらいたいとも思っています。しかし、留学生の特性を理解していないと、文化の壁から、なかなか採用できないのも事実です。
正確なデータではありませんが、日本人学生の新卒から3年以内に退職する率は、確か3割くらいだったと記憶しています。つまり、新卒に長く働いてもらおうということ自体が難しくなってきている時代です。確かに一見、ライフ志向の学生の方が従順で長く働いてくれそうな気もします。しかし、退職率をみると結果的には、日本人も外国人留学生も変わらないのかもしれません。そこで、キャリア志向の留学生と向き合って、彼らの力をどうしたら社内で活かせるのか?考えてみてはいかがでしょうか?
留学生はキャリア志向であるということ。このことが少し分かってくると、留学生の面接での会話にも、多少、理解できることもあるのではないでしょうか?私は霧が晴れたのですが、皆様はいかがでしょうか?