トラブルなく外国人を採用するために知っておくべき5つの知識

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インバウンド需要の後押しもあり、各社続々と外国人採用を推進しています。2016年に発表されたJETROの調査では、外国人を採用している企業は全体の46.0%と2年連続の増加傾向を記録しました。しかしながら、多くの企業で外国人材活用が進む一方で、想定外の問題で内定辞退となったりミスマッチによる早期退職といったトラブルを経験されたかたも多いのではないでしょうか。

外国人採用は、方法論さえつかめば実は難しいものではありません。本記事では失敗事例を元に外国人採用に興味がある、又は検討されているかたが知っておくべき5つの知識をご紹介します。

1. 外国人採用が推奨されないケースを知る

外国人材を安定して活用できている企業の共通項には、明確な採用目的と安定した手段を持っていることが挙げられます。採用を考える前に、まずは「そもそも外国人を採用すべきか?」という問いを考えてみましょう。

1-1. 外国人採用検討チェックリスト

  • 外国人(取引先・顧客)とやりとりしている部署がある
  • 訪日観光客向けのインバウンド事業を行っている
  • グローバル対応ができる若手人材を募集したい
  • 社内環境を活性化したい

このリストは実際に外国人採用を行っている企業が共通して持っている採用目的です。1つでも該当するならその会社には外国人採用を推進すべき理由があり、当てはまらない場合には再検討が必要です。

1-2. 外国人採用のよくある失敗例

Case1:社内に語学力・スキルを活かせるポジションがない
外国人採用における代表的な失敗事例のひとつに、社内に受け入れ環境や採用目的がないまま、日本人と同じ土俵で選考を進めてしまうことが挙げられます。優秀な人材を一人でも多く獲得したいという思いから国籍の縛りなく門戸を広げる企業は増えていますが、採用理由が曖昧な人材へ内定を出した場合、就労ビザが下りず採用コストが無駄になってしったり、入社後の日本語コミュニケーションの壁にぶつかり、本人の能力が活かせないまま早期離職してしまうなどのトラブルに繋がります。
Case2:人件費を削減したい
外国人採用においては基本的に日本人と同等以上の給与がなければ就労ビザが許可されません。雇用形態や職種によってはそれだけで人件費が削減されるケースもありますが、低賃金で単純労働に酷使させるためではなく、能力ベースで判断したときに日本人よりも優れていた、という理由である必要があります。一見矛盾しているようですが、国内で外国人材を募集している企業はある程度限定されるために、国内人材よりも低コストで能力の高い人材をスカウトできるケースが往々にしてあります
Case3:募集要件が難しく応募者が集まらない
既存スタッフとのギャップを恐れるあまり、「日本語ネイティブでコミュニケーション能力があり、地頭がよく、業務経験も豊富」といった超人的な応募要件を定めてしまう企業があります。外国人の採用経験に乏しい企業にありがちな失敗ですが、多くの場合、語学能力と職務経験はトレードオフの関係です。語学能力を目的とした採用の場合、社会人経験の長さなどで代替評価するのも一つの手です。

2. 在留資格を取得できる職種で募集する

外国人採用には、募集要件と本人のスキル(語学力や業務経験など)を合致させるという基本原則があります。その基本原則を外れて候補者を選考しても在留資格が取得できず、採用不成立に陥ってしまいます。では、一体どのような職種が適しているでしょうか。次の表を見てください。

在留資格(≒就労ビザ)とは?
外国人が日本に滞在するために許可される資格要件です。日本における在留資格は27種類*あり、与えられた範囲内を超えた活動は認められません。厳密には就労ビザという在留資格はなく、就労が認められている在留資格(22種類)を総称するための言葉として使われています。特に断りのない場合、本記事では就労ビザ=就労が認められている在留資格
*2017年11月現在。就労が認められている在留資格全22種類については厚生労働省の解説を参照してください。

2-1. 外国人材の募集例と就労可否

職種 就労可否 在留資格
海外営業 「技術・人文知識・国際業務」
IT/機械エンジニア 「技術・人文知識・国際業務」
外国人向けのサポートスタッフ 「技術・人文知識・国際業務」
通訳・翻訳 「技術・人文知識・国際業務」
デザイナー 「技術・人文知識・国際業務」
設計技師 「技術・人文知識・国際業務」
コック・シェフ・ソムリエ 「技能」※実務10年以上
営業スタッフ 語学力・スキルを活用する業務が存在ない場合は不可
工場・現場作業員 単純労働を目的としたビザは取得不可

繰り返しになりますが、在留資格は、外国人の語学力や経験・スキルを活かした職種かどうかで取得可否が決まります。職場環境や本人のスキル幅などでも異なるため単純な判断はできませんが、基本原則として必ず覚えておきましょう。なお、例外的に日本人の配偶者や永住者など身分に基づく在留資格の場合は制限がなく、どのような職種でも働くことができます。

2-2. 募集職種を「技術・人文知識・国際業務」ビザの範囲にする

2016年に就労を目的として発給されたビザのうち、およそ半数にあたる49%が「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得しています*。エンジニアや、海外営業、通訳翻訳など、ホワイトカラー系の一般的な在留資格では多くの企業がこの資格に関連した募集を行っていますので、外国人採用の基本として必ず覚えておきましょう。具体的な取得条件は就労ビザ取得可能性チェックリストをダウンロードしてください。
*一般企業において関連が低い5種(教授、興行、芸術、宗教、報道)は除外して算出。

3. 採用目的に沿ったアプローチ手段を検討する

採用予算や求める人物像、採用時期により取るべき方法は異なります。下表を参考に自社に適している方法を検討しましょう。

3-1. 外国人材の採用手段と特徴

名称 平均費用 備考
公的機関での募集 無料 ハローワーク(厚生労働省)や地方自治体が提供する採用サービスを利用する。東京外国人雇用サービスセンターなど。
人材紹介会社からの紹介 120万〜 日本語能力などをオーダーでき、未経験でも優秀な人材へ精度が高くアプローチできる。ただし成果費は年収の3割〜4割が相場となるため、大量採用には不向き。
求人メディアでの募集 40万〜 月額掲載+オプション型が主流。掲載費内で何人でも採用できるメリットはあるが、採用業務が国内人材の募集以上に煩雑になるため、慣れが必要。
転職フェアへの参加 40万〜 その場で会って相性を確認するため効率が良い。選考母数は当日参加者のみに限られるため、採用につながらない場合は掛け捨てになる可能性が高い。
ダイレクトソーシング 60万〜 FacebookやLinkedInを利用して候補者に直接アプローチを行う。成果がでるまでに社内コストがかかるが、自社採用基盤が構築でき、採用成果費も発生しない。
知人・スタッフからの紹介(縁故) 無料 募集に緊急性がない場合は最も確実で、かつ採用費を抑えられる。ネットワークの外にいる人材へはアプローチができない。

4. 選考側、採用側双方にとってわかりやすい選考基準を設ける

外国人採用では、採用基準やルールを設けて最後までブレずに応募者を選考することが大切です。他社での選考基準例を見てみましょう。

4-1. 外国人採用における選考判断の例

  • 最終学歴が大学卒業以上であること
    技術・人文知識・国際業務ビザでは、大学(院)または本国における同等の学校の卒業か、日本での専修学校の専門課程を修了したことが取得要件となります。なお、最終学歴が高卒でも実務経験が10年以上ある場合は上記の学校卒業と同等にみなされます。
  • 日本語能力検定(JLPT)がN3以上であること
    N1からN5まであり、数字が若いほど高い日本語能力を持っています。多くの企業が設定している最低基準はN3で、ビジネス会話などが発生する職種の場合はN1からN2を足切りラインにするケースが多いです。
  • 業務スキルがあること
    母国での就業経験を記載している候補者の場合、在籍していた企業に関する情報が見つけ辛く、業務スキルを判断しにくいケースがあります。場合によっては本人の母国語(又は英語)での面接を行い、求めるスキルを持っているか細かく確認しておくのが理想です。
  • 内定後に在留資格を取得できること
    応募者が「技術・人文・国際知識」、又は他の要件で在留資格を申請できそうかこのリストからチェックしてください。特に職務経験のない留学生では卒業した学部と応募先の職務の内容が関連している必要があります。
  • 現在の在留資格が問題ないこと(国内在住者の場合)
    「通訳翻訳者からシステムエンジニア」のように、候補者のキャリアと募集職種の業務内容が大きく異なる場合、在留資格変更手続きを行うため、入社時期が遅くなったり採用不成立となるリスクがあります。 また、稀に本人がビザの更新を忘れているなどでオーバーステイ状態になっているケースも当然許可されませんので、有効期間内か確認しておくことも重要です。

5. 入社時期の調整や受け入れの準備をする

採用方針が決まったら、あとはいくつかの手続きを行うだけで入社手続きは完了です。特別難しいものはありませんが、提出時期や期限が設定されているものもありますので、やや注意が必要です。

5-1. 内定通知書・労働契約書の提示

採用条件が決まったら、雇用条件を記載した労働契約書とともに候補者へ通知しましょう。双方合意が取れた段階で内定応諾書、または労働契約書へサインしたものを受け取ります。専門用語が理解できず後々のトラブルに繋がるケースもありますので、本人が理解できる母国語や英語などの標準的な言語で翻訳文を作成し、両方を本人に配布しておくのが理想です。就労資格の申請には内定通知書か労働契約書が必要となりますので、採用が決まったら可能な限り早めに取り交わしておきましょう。

内定通知書・応諾書の雛形

内定通知書・応諾書はフォーマットが決まっていないため、自社で利用しているものがあればそのまま提出可能です。その場合は、雇用期間、就業の場所、業務内容、就業時間等、労働条件がきちんと明記されているかを確認してください。

5-2. 在留資格認定証明書の申請

審査に必要な申請書はこちら、書類一覧はこちらからダウンロード可能です。申請者本人が記入することもできますが、不備による再提出になった場合は許可されるまでの延びるリスクがありますので、必ず専門知識を持ったかたにチェックを依頼することをおすすめします。申請書類は下記よりダウンロードできます。

「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請書類等

上記の書類は「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請を対象としたものです。申請する資格によって書類様式が異なりますのでご注意ください。リンクをクリックするとすぐにファイルのダウンロードが始まります

5-3. 外国人雇用状況届出書の提出

新たに外国人材を採用した場合は翌月10日までに届け出ることが義務化されています。インターネットからも行えますので忘れずに行なってください。

ハローワーク外国人雇用状況届出システム 最寄りのハローワークでも届出できます。

6.最後に

現在100万人に達し、今後も増え続けています。複雑に思える入社手続きも、慣れてしまえば特別難しいものではありません。国内就労人口が減少するなか、優秀な外国人採用を通じて事業成長の足がかりにしましょう。